こんにちは薬剤師の赤羽です。
今回もインフルエンザ予防について調査を進めていこうと思います。
今まで紹介した予防法以外にも話題になっている予防方法があります。それは歯磨き等の口腔ケアです。
理屈上はかなり有力な予防手段の一つだと思います。しかし、臨床研究論文があまりないようで調査に苦戦してしまいました。唯一見つかった研究での予防率は90%(*1)です。試験からの脱落者が多く、信頼にかける部分がある試験ではありますが予防効果があることは確かなようです。ここから先は少しマニアックな話になります。
インフルエンザウイルスが増える仕組み
なぜ、歯磨きがインフルエンザの予防になるのかを理解するためにはインフルエンザウイルスが体内で増える仕組みを知る必要があります。以下、ウイルス増殖の説明です。
- ウイルスを身体に取り込む(感染者のつば、手指、くしゃみ)
- ウイルスが細胞に入り込む
- ウイルスが細胞の中で増える
- ウイルスが細胞から離れて他の細胞に移動する。
4)の工程の時に細胞から離れるためのハサミ(ノイラミニダーゼ)が必要です。インフルエンザウイルスはこのハサミを自前で用意しています。有名なインフルエンザの薬「タミフル」や「イナビル」はこのハサミを邪魔することでウイルスが増えるのを防いでいます。
おそるべき事実!
ウイルスの増殖に必要なハサミ(ノイラミニダーゼ)ですがなんと口腔細菌(歯垢のなかにいる!)も持っていることが明らかになったのです!(*2, *3)ウイルス本体が持っているハサミに加えて、口腔細菌のハサミも加わったらもうパニックです!
口腔ケアの効果はいかに?
デイサービスに通う高齢者を対象に口腔ケアを歯科衛生士が行うグループと自分で行うグループに分けて、インフルエンザの感染率を比較しました(*1)。口腔ケアによる予防率は90%でした。詳細は下表をご参照ください。両グループともに予防接種の実施率は5割弱です。
口腔ケア群 | 特になし | |
対象者 | 98人 | 92人 |
インフル | 1人 | 9人 |
感想
歯磨きがインフルエンザ予防に効果があるのは確かなようです。これからさらなる研究の進展が期待されますね!
参考文献
- Volume 43, Issue 2,?September?October 2006, Pages 157-164
Professional oral care reduces influenza infection in elderly Author links open overlay panelShuAbeaKazuyukiIshiharaaMiekoAdachibHidetadaSasakicKoukoTanakadKatsujiOkudaa - Cell Mol Life Sci.?2015 Jan;72(2):357-66. doi: 10.1007/s00018-014-1669-1. Epub 2014 Jul 8.
Neuraminidase-producing oral mitis group streptococci potentially contribute to influenza viral infection and reduction in antiviral efficacy of zanamivir. - 日本大学医学部総合医学研究所紀要
Vol.1 (2013) pp.94-98