【肥満の考察⑥:最終回】なにが体重を決めているのか?

こんにちは薬剤師の赤羽です。前回までの調査で体重は摂取カロリーによらず、人体によって自動的に調整されていることがわかりました。これはあたかもエアコンの温度調整のようなものです。それではいったいどのような要因が体重調整をしているのでしょうか?
エアコンの温度を調整している男性のイラスト(節電)

体重を決める要因

いろいろな調査から体重を決める主要な要因が2つあることがわかってきました。要因の一つは遺伝とされています(※1)。これは個人の努力で変えられません。肝心なのは個人の努力でどうにかなるもう一つの要因です。それが「インスリン分泌」です。

インスリンとは何か?

インスリンとはホルモンの一種で、血糖値を下げる役割で知られています。このインスリンですが脂肪合成を促進する役割でも知られています。様々な研究からインスリン分泌量増加が体重増加と関係があることがわかっています(※2)。インスリンが体重の調整ダイヤルを回している犯人なのです。

どうすればインスリン分泌を調整できるのか?

体重増加の要因は過剰なカロリー摂取ではなく過剰なインスリン分泌であることがわかりました。では、どうすればインスリン分泌を少なくすることができるのでしょうか?

インスリン分泌量を少なくする方法

人は年齢を重ねるごとに体重が増加していく傾向があります(※3)。若い時よりも食事量は落ちているはずなのに。この現象は長年継続した不適切な生活習慣の影響でインスリンの感受性が低下し、それを補うためにインスリンの分泌が増加した結果と思われます。この現象を「インスリン抵抗性」と言います。このインスリン抵抗性を改善することができればインスリン分泌量を減らして、体重を落とすことが可能と考えられます。

どうやってインスリン抵抗性を改善するのか?

インスリンの感受性を改善する(インスリン抵抗性を改善する)方法は色々と分かっています。以下、ご紹介したい思います。

  1. ストレスを減らす。
    ストレスを受けるとコルチゾールというホルモンが出ることが分かっています。このホルモンが分泌されると血糖値が高くなり、それにともないインスリン分泌が増加することが分かっています(※4,5)。仕事や家事、介護などで長時間にわたってストレスが持続することがコルチゾールの慢性的な分泌につながり、インスリンの慢性的な分泌につながります。運動、入浴、などでストレス軽減を図ることは有益と思われます。睡眠時間をしっかりと確保することも有益とされています。
  2. 食事回数を減らす。
    摂取カロリー、食事内容のなどよりも食事回数のほうが肥満に対する影響が大きいことが分かっています(※6)。これは食事の刺激で、人体が長時間のインスリン分泌にさらされるためです。長時間のインスリン分泌はインスリン抵抗性を生み出し、結果的にインスリン分泌量の増大を招いてしまうのです。すなわち、健康的だと思っていた1日3回の規則的な食事が肥満の原因なのです。間食(たとえ飴玉1個でも)が加われば一日の食事回数が6回に及ぶことも珍しくありません。この状態は朝起きてから寝るまでひっきりなしにインスリンが分泌されていることになります。改善のためには「おなかが減っていないのに食べない」ことが大切でしょう。とくに朝はおなかが減っていないことが多いので無理に食べる必要はないことでしょう(※7)。間食も可能な限りなくしていきましょう!

まとめ

今まで常識とされていた、朝ご飯が健康にいいという考えは見直す時期に来ています。朝ご飯が健康に良い理由「頭の回転をよくする」、「肥満防止」、「午前中の元気のため」はすべて科学的な証明が困難です。しかし、肥満の原因になっていることは科学的に立証されつつあります。我々、現代人は常識に疑いの目を向け、自らの判断で、新しい健康習慣を身に着ける必要性に迫られているのです。

参考文献

1)An adoption study of human obesity. Stunkard AJ, Sørensen TI, Hanis C, Teasdale TW, Chakraborty R, Schull WJ, Schulsinger F.
2)Analysis of obesity and hyperinsulinemia in the development of metabolic syndrome: San Antonio Heart Study.  Obes Res. 2002 Sep;10(9):923-31.
3)「平成29年国民健康・栄養調査報告」(厚生労働省)
4)Stress-related cortisol secretion in men: relationships with abdominal obesity and endocrine, metabolic and hemodynamic abnormalities. J Clin Endocrinol Metab. 1998 Jun;83(6):1853-9.
5)Hyperinsulinemia is not a cause of cortisol-induced hypertension. Am J Hypertens. 1994 Jun;7(6):562-5.
6)Energy density, portion size, and eating occasions: contributions to increased energy intake in the United States, 1977-2006. PLoS Med. 2011 Jun;8(6):e1001050. doi: 10.1371/journal.pmed.1001050. Epub 2011 Jun 28.
7)Impact of breakfast on daily energy intake – an analysis of absolute versus relative breakfast calories Nutr J. 2011; 10: 5.     Published online 2011 Jan 17. doi: 10.1186/1475-2891-10-5