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こんにちは薬剤師の赤羽です。病気は2種類に分けることができます。2種に分類することで的確な対応ができます。詳しくみていきましょう!
病気の定義
2種類の病気の話を進める前に病気の定義について考察したいと思います。「外部および内部からの刺激」によって「平常状態を維持する力」すなわち「恒常性」が崩れることを病気と定義したいと思います。平常状態を維持する力(恒常性)について簡単に説明します。恒常性とは刺激を緩衝し、平常状態を維持する能力のことです。例えば、「多少寒い環境でも体温を維持できる」、「数週間、食事をしなくても死なない」などです。
同じ足の痛みでも高齢者と若者では病気の種類が違う
ではさっそく、病気の具体例から考えていきたいと思います。全く同じ症状の足の痛みであったとしても、若者と高齢者では病気の種類が違うというのが私の考えです。若者の足の痛みは「高いところから落ちた」などの日常的な刺激からかけ離れた強い刺激によるものである場合が多いと思います。一方、高齢者の足の痛みは「ちょっとした段差でつまづいた」などの日常的な刺激から生じるものである場合が多いと思います。これは同じ足の症状でも原因が異なることを示しており、若者は強い衝撃、高齢者は低下した衝撃耐性が原因と言えます。
「強い刺激」と「低下した耐性」
このことを一般化すると病気の種類は「強い刺激」と「低下した耐性」に大別できるといえます。「強い刺激(病気タイプ1)」による病気の例は火傷、怪我、感染症、放射線障害などです。一方「低下した耐性(病気タイプ2)」による病気の例は高血圧、糖尿病、高尿酸血症、骨粗鬆症、緑内障などです。強い刺激による病気はいわゆる急性疾患が多く、低下した耐性による病気は慢性疾患が多いと思います。
薬にも2種類ある
病気のタイプと同じように、薬にも2種類あります。病気タイプ1の「強い刺激」を緩和する作用を持つ薬を「薬タイプ1」と呼びたいと思います。一方、病気タイプ2の「低下した耐性」を補う作用を持つ薬を「薬タイプ2」と呼びたいと思います。
どの病気にどの薬がいいのか?
ではそれぞれのタイプの病気にどのように対応するのが良いのでしょうか?例えば同じ足が痛いでも病気タイプ1と病気タイプ2で対応が異なります。「病気タイプ1」への対応は「薬タイプ1」での対応が基本になります。一方「病気タイプ2」への対応は「薬タイプ1」と「薬タイプ2」を組み合わせて行います。
骨折に対する対応の違い
では、具体的に見てみましょう。若者の骨折は「病気タイプ1」なので痛み止めなどの「薬タイプ1」による対処が基本です。一方、高齢者の骨折は「病気タイプ2」なので「薬タイプ1」である痛み止めを使用するとともに「薬タイプ2」であるビタミンD、女性ホルモン様作用薬、漢方薬、運動、食事改善などを併用していきます。同じように見える病気でも本質を見極めて適切な対応をすることが治癒(恒常性を回復すること)への近道です。
薬剤師の仕事とは
それでは、薬剤師の視点から病気の薬物治療を見ていきましょう。薬剤師にとって重要なのは薬の副作用・相互作用です。この副作用・相互作用とは実は「薬」によって「病気タイプ2」が人工的に引き起こされている状態のことです。例えばロキソニンという薬を飲むと、痛みという刺激を緩和することができます。しかし、一方では胃壁の胃酸に対する耐性を低下させて、胃腸障害を引き起こす可能性があります。薬剤師はこの薬によって引き起こされる副作用・相互作用(人工的病気タイプ2)に対して注意を払っています。皆さんに対して薬剤師が話すことはほとんどこの副作用・相互作用(人工的病気タイプ2)に関する注意事項だと思って間違いありません。これを「服薬指導タイプ1」と呼びます。
現代の薬剤師に求められることは
「病気タイプ1」の治療は基本的に医療が主役です。本人の行動変容は必要としません。一方、「病気タイプ2」の治療は基本的に本人が主役です。なぜなら、「低下した耐性」の回復のためにはイマイチ効果がわからない薬を長期間服用する必要があり、さらに生活習慣改善を同時に行う必要があるからです。本人の行動変容が必須です。この行動変容を支援することを「服薬指導タイプ2」と呼びます。
薬剤師がすべきことは
昔の時代(昭和、平成の時代)の薬剤師にとって重要な仕事は「服薬指導タイプ1」によって、副作用相互作用(人工的に引き起こされた病気タイプ2)を回避することでした。しかし、現代の薬剤師にとって重要な仕事は「服薬指導タイプ2」によって行動変容を支援することです。