かかりつけ薬剤師は必要か?

こんにちは薬剤師の赤羽です。今回はかかりつけ薬剤師について考察してみたいと思います。皆さんはそもそもかかりつけ薬剤師という制度をご存知でしょうか?かかりつけ薬剤師とは常に同じ薬剤師から処方箋に基づく調剤、服薬指導を受けるという制度です。初めてこの制度を知った方も多いのではないでしょうか?この制度の必要性について掘り下げてみたいと思います。

かかりつけ薬剤師に期待されること

「患者のための薬局ビジョン」というものが厚生労働省から発表されています(1)。それによれば服用している薬剤を一元的に薬局が管理することで「重複投与、相互作用、副作用」などを回避、早期対応できるようになるということです。皆さんはこの考えについてどう思いますか?私は、これはIT技術によって十分達成されると考えており、この意味ではかかりつけ薬剤師の果たす役割は大きくないと考えています。今後はクラウドによる電子処方箋、服薬情報、カルテの共有、検査値の共有が検討されています(2)。薬局・薬剤師を一元化させなくても、情報をITで統合すれば問題なく「重複投与、相互作用、副作用」については回避・予防できると思います。

かかりつけ薬剤師はいらない

IT技術によって解決できる問題なら、わざわざ「かかりつけ薬剤師」などは不要でしょう。しかし、私はやはり「かかりつけ薬剤師」は必要だと考えています。それは薬剤師には二つの面があり、そのうちの片方が高齢化社会には必要だと思うからです。

薬剤師が持っている二つの面

薬剤師は修理屋さんと、メカニックの二つの面を持っています。修理屋さんとは技術的問題を解決するための役割です(3)。技術的問題とは一律に答えが定まり、解決のために知識や技術がものをいう問題です。具体的には家電の修理、車の修理、算数の問題、学校のテスト、日本の大学のテストなどです。IT技術が得意とする領域です。これはまさに「重複投与、相互作用、副作用」を回避するために必要な役割です。一方、メカニックは適応課題を解決するための役割です。適応課題とは一律に答えが定まらず、解決のためには状況への適応力が問われる問題です。具体的には戦争、夫婦喧嘩、嫁姑問題などです。IT技術が不得意とする領域です。これは「生活習慣改善、服薬コンプライアンスの向上、病気による将来の不安の解消、治療方針決定の支援」などを解決するために必要な役割です。
修理屋さん的な役割よりも、メカニック的な役割の方が現代社会では重要です。なぜなら生活習慣病が蔓延し、ほとんどの人が生涯を通じて糖尿病、高血圧、脂質代謝異常症などに罹患するからです。生活習慣病は人類が現代社会にうまく適応できていないからこそ生じる適応課題なのです。
急性疾患(かぜ、盲腸、感染症、骨折など)は修理屋さんの出番です。当の本人に治療の主導権はなく、専門家に任せることになります。一方、慢性疾患(生活習慣病など)はメカニックの出番です。当の本人に治療の主導権があり、自力で対応することになるからです。これは治療の主体が習慣の矯正になり、そのためのアプローチに絶対的な正解はないからです。食習慣の改善ひとつとっても、自分のことを理解してくれる専門家と時間をかけて調整していく必要があります。

修理屋さんとメカニック

修理屋さんとメカニックのアナロジーについて補足説明します。修理屋さんは壊れた部品を交換したり、直したりして機械が正常に動作するようにする仕事です。一方、メカニックはもともと正常に動いている機械を使用者に合わせて調整する役割です。例えば車の修理屋さんは壊れた機械を治す仕事、メカニックはモータースポーツでタイヤ空気圧、ダンパー減衰、バネレートなどを調整し、個々のドライバーに最適なように調整していく仕事です。修理屋さんよりもメカニックの方が生活習慣病改善のパートナーとしては重要です。なぜなら、問題解決のための絶対解は存在せず、時間をかけてじっくり調整していく必要があるからです。例えば肥満を解決するための方策をそれぞれの立場から見てみましょう!

【修理屋】
・食べ過ぎて肥満になっている場合、本人の自己責任であると断定する。その上で、食べ過ぎが肥満の原因なので食べ過ぎないように注意してください。などと、行動を否定し、正論を吐く。全ての肥満の人に対して「食べすぎるな」の一律の絶対解を提示する。非常に無意味。

【メカニック】
・食べ過ぎて肥満になっているのは環境によるもので本人に責任はないとする。そこから対策を考える。例えば、間食をしてしまうようであれば、間食を避けるための環境づくりを一緒に考える。この場合は対策は千差万別で一人一人に違う対策が講じられる。非常に有益。

まとめ

従来、薬剤師は修理屋さん的な技術的問題を解決する側面が強調されていました。それは近代まで急性疾患(感染症、怪我など)こそが治療の中心だったからです。しかし、現代ではメカニック的な適応課題に取り組む側面が重要です。それは現代では慢性疾患(生活習慣病)が治療の中心になっているからです。メカニック的な役割の方が修理屋さん的役割よりも生活習慣病への取り組みとしては大事で、それこそが「かかりつけ薬剤師」に求められる仕事です。

参考文献

1)厚生労働省資料
2)電子処方箋
3)当薬局のブログ