治療の3層構造

治療は3層構造になっています。対症療法(第一層) 中間(第二層) 根治療法(第三層)です。西洋医学的には対症療法(第一層)のみを対象とします。東洋医学は全ての層を考慮して治療戦略を立てていきます。 日本人も基本的に第一層のことしか考えません。これは西洋医学、西洋文明の影響です。mDNA、遺伝子治療などのワードに魅せられて、病気を要素還元で理解しようとする癖がついてしまっています。要素還元とは原因を一つにしぼる考え方です。その一つがどこまで細かく定義できるかが、勝負です。細かければ細かいほどかっこいいと思っています。遺伝子治療が最高にカッコいいと考えているのが日本人です。

第一層 対症療法

まずは対症療法です。具体的な症状に対して対応するものです。たとえば頭痛薬、胃薬、下痢止め、便秘薬などです。ほとんどの西洋医学はこのレベルです。近代医学すなわち近代科学は要素還元主義で成り立っています。要素還元主義とは問題を特定の要素一つの責任であると捉えることです。

生命現象をひたすらに単一要素に分解します。体の各臓器、各細胞、各DNA まで分解します。極限まで要素に分解し、その要素の中にエラーがあればそれを修復します。

しかし、生命現象、物理現象、化学現象は本来システムで、複合的な要素が絡み合い、複雑な結果を導き出します。このような単純な考えはほぼ通用しません。それ故に現代の科学、哲学、は要素還元からシステム論、カオス理論に舵を切り直しています。

対症療法はシステムを無視しているため、治療が新たな疾患を生み出しています。薬が副作用の原因になり、その副作用のための薬が増えると言う状況です。

また、この考えは非常に根強く現代人の考えに染み込んでいます。たとえば政治です。一人の政治家を非難してキャンセルすれば世界がよくなるという、要素還元的な思考回路が蔓延しています。実際の政治は複雑な力学で動いており、単純ではありません。一人の政治家をキャンセルすることで世界がよくなると思っているなら、思い違いです。逆に同じ理屈で英雄もいません。一人の天才や偉人が状況を変えることはありません。

われわれ日本人が要素還元的思考回路から抜け出さなければ未来はありません。

第二層 中間

次に中間です。中間とは対症療法と根治療法の両方の性質をもつ治療です。

西洋医学にはない発想が根治です。発想としては要素還元論の対局でシステム論(創発)です。一つ一つの要素は極めて単純だが、それが集合体となった時に極めて複雑で多様な働きが起こると言う現象です。これは自然界にはありふれた現象です。たとえば「アリの巣」。アリのDNAや細胞をどれだけ調べても「アリの巣」という精密な構造物の設計図は見つからないでしょう。「アリの巣」の設計図は単純な要素である個が集合したところに「創発」するのです。

東洋医学は「創発」をもとからその理論体系のなかに組み込んでいます。つまり、生命体を単純な要素の集合体、DNAに全ての情報が書き込まれているとは考えていません。

東洋医学は自然のシステムを抽象的に理解することに努めています。細かいことは置いておいて、対局を定める大きな仕組みに注目します。それが生体のバランスです。生体を構成する要素はお互いに助け合い、コントロールしあう関係にあります。その大きなシステムの相剋の理解に努めているのが東洋医学です。たとえば、胃腸が弱れば、栄養が足りなくなって、筋肉が少なくなり、めまいや転倒しやすくなる。などです。西洋医学は「めまい」の部分だけを取り出して、そこをどうにかしようとします。一方の東洋医学は「胃腸が弱っている」という部分まで遡ります。このように「めまい」ひとつとっても、西洋医学(要素還元)と東洋医学(システム)で大違いです。西洋医学ではめまいの薬はわずか数種類です。西洋医学的アプローチではその種の薬が効かなかったらお手上げです。ストレスや年齢のせいにして放置されることになります。一方の東洋医学ではシステム論的にアプローチしますのでめまい一つとってもほぼ無限の対処法が存在することになります。どこまで遡るか?システムを抑制するか?活性化するか?あらゆる手段で状況に対応できます。

中間(第二層)とは、この「システム論」てきアプローチと「要素還元的アプローチ」を混成させた対処法です。

第三層(根治)

前段で説明した、システム論のアプローチです。原因のより奥深いレイヤーまで治療の対象とします。たとえば骨が弱い人を考えます。

加齢で食欲低下→栄養不足→筋肉量低下→骨量低下→骨折

などです。この場合、西洋医学は骨を強くするという非常に調節的なアプローチをします。東洋医学的に根治(第三層)を狙う場合は食欲不振のれべるまで潜ります。胃腸機能を高める、加齢の影響を緩和するなどの方策を取ります。

このアプローチは全く即効性がないし、失敗する可能性も高いです。なぜなら、そのようなシステムの乱れは環境要因が大きいからです。生まれつきの体質、生まれた時代、政治体制、経済状態、住んでいる地域などの根源的原因が背景にあるからです。簡単に変えられるものではありません。

たとえば明治時代にほとんどいなかった糖尿病の人が現代では爆発的に増えました。

しかし、このようなメカニズムを理解し、少しでも争うことができたなら少しはマシになるかもしれません。

 

 

 

 

 

 

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