こんにちは薬剤師の赤羽です。今回は抗生物質について掘り下げてみます。
風邪をひいてお医者さんにかかると、たいてい抗生物質を出してくれますね。あれは本当に必要なのでしょうか?
風邪に抗生物質はほとんど意味がない
皆さんは風邪の時にお医者さんから抗生物質を出してもらったことがありますか?実は、風邪に抗生物質はほとんど効果がありません。なぜなら風邪の原因の80?90%がウイルスだからです(参考1)。抗生物質は細菌が原因の場合のみ有効です。仮に細菌が原因であっても、不要なケースが多いようです。実際のデータで確認しましょう。
抗生物質が有効なのは4000人に1人
ではなぜお医者さんは効果がない抗生物質を処方するのでしょうか?これは重症化を防ぐためと言われています。風邪が重症化すると肺炎になります。では実際に風邪で抗生物質を服用することで肺炎を防げるのか見てみましょう!(参考2)
重症化率(1万人あたり) | |||
抗生物質 | あり | なし | 差 |
0-4歳 | 6.7人 | 10.7人 | 4.0人 |
5-15歳 | 4.0人 | 4.5人 | 0.5人 |
16-64歳 | 5.4人 | 6.7人 | 1.3人 |
65歳以上 | 33.2人 | 53.7人 | 20.5人 |
重症化を防げたのは1万人当たり1.3人(16?64歳)だけです。また、ほとんどの人は肺炎になることなく治っていることがわかります。すなわち、抗生物質投与は意味がないと言い切ることができます。全年齢を考慮すると抗生物質のメリットを享受できるのはわずか4000人に1人です。
まとめ
ふつうの風邪のときに抗生物質は無意味です。風邪を治す力もないし、重症化を防ぐ効果もほとんどありません。無駄な抗生物質の服用は副作用リスク、抗生物質が効かなくなるリスクを高めるだけです。抗生物質が効かなくなるのはとても恐ろしいことです。2050年には感染症が死因の1位になる可能性があるのです。これは全世界で抗生物質が効かないことで死ぬ人が1000万人を超えると予想されているからです(参考3)。この数字は現時点の全世界での癌死亡者数(870万人)を上回ります。ちなみに、癌は日本では死因の1位です。
それでは、次回からどんな場合は抗生物質を使う必要があるのか見ていきたいと思います。
参考文献
1)かぜ症候群|一般社団法人日本呼吸器学会 ホームページ
2)Protective effect of antibiotics against serious complications of common respiratory tract infections: retrospective cohort study with the UK General Practice Research Database
3)薬効かない菌、世界で急拡大?「2050年1000万人死亡」英で予測?2015/2/25付 日経新聞