なぜ生活習慣病になってしまうのか?

こんにちは薬剤師の赤羽です。中年以降の悩みの種である生活習慣病について深掘りしたいとおもいます。

生活習慣病とは何か?

生活習慣病とは具体的には高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などです。これらは食事や運動の影響で発生する病気です。以前のブログでお話ししたように病気とは体が持つ恒常性(体調を一定に保つ働き)を維持するシステムが外部・内部からの過剰な刺激により破綻することです。例えば、高血圧症は塩分摂取、寒冷気候、精神的ストレスなどの外部刺激に対して、影響を緩衝するシステムが破綻して血圧が正常値を維持できなくなり発症します。糖尿病は糖質摂取などの外部刺激に対して、影響を緩衝するシステムが破綻して血糖値が正常値を維持できなくなり発症します。

病気と健康はリニアな関係か、シグモイドな関係か?

例えば血圧は110→120→130→140→150というように長い期間をかけて、徐々に病気になっていくものなのでしょうか?現実はそれとは異なり、比較的短期間に正常値から異常値になってしまうはずです。1年づつ徐々に悪くなっていくわけではありません。体はぎりぎりまで塩分摂取やストレスに対抗するために刺激を緩衝し続けますが、どこかでシステムが破綻します。その時に初めて病気、すなわち高血圧症になるのです。刺激の強さと、体への影響はリニアな比例関数ではなくシグモイド関数で表現されることになります。

環境用語集:「シグモイド曲線」|EICネット

若い健康な人はどれだけラーメンを食べても血圧、血糖値、中性脂肪、尿酸値等に大きな影響はないでしょう。それは外部刺激への緩衝能が正常に機能しているからです。一方、生活習慣病の人はその緩衝システムが破綻しているため、若い人と同量のラーメンを食べても大きな影響を受けてしまいます(血圧、血糖値、尿酸値、中性脂肪の上昇)。生活習慣病の人は若い健康な人より少し血圧が高いから病気なわけではなく、緩衝機能が破綻しているから病気なのです。

なぜ緩衝システムが破綻するのか?

では、どのように緩衝システムが破綻していくか考えてみましょう。システムを単純化して考察してみます。システムがいくつかのパーツで構成されていると仮定します。各パーツには使用期限があり、それを過ぎると急激に機能が低下するとします。健康な人の体では使用期限が切れたパーツは体が自動的に排除します(オートファジー)。そのおかげで新しいパーツが導入されてシステムの機能は維持されます。このように維持されているシステムが破綻するのは次の2つの場合です。

1)新規のパーツがシステムに供給されなくなり、老朽化したパーツを酷使せざるを得なくなりシステムの能力が低下する
2)老朽化したパーツが排除されないために、新規パーツが導入されなくなりシステムの能力が低下する

1)の場合は例えば飢餓状態、栄養失調、体液喪失(怪我などによる出血)などが原因になります。一方、2)の場合は慢性的な過食、運動不足などが原因として考えられます。1)の場合は感染症、怪我などの急性疾患、2)の場合は生活習慣病などの慢性疾患ということが言えると思います。

なぜ老朽化したパーツが排除されなくなるのか?

もともと人類は数万年に渡って、不規則な食事、5キロ程度の移動、大きな寒暖差などのストレスを受けてきました。このようなストレスがスイッチになってパーツの入れ替え(オートファジー)が促進されるようにできています。このパーツ入れ替えの大事なスイッチである「適度なストレス」が近代化によって少なくなってしまったのです。そのために、老朽化したパーツの入れ替えに滞りが生じるようになったしまいました。老朽化したパーツの数がある一定の数より増加するとシステムが破綻します。例えば10のうちの4までは老朽化したパーツが容認されるけど、それが5になると一気に厳しくなるというようなことです。飲食店の営業でも同じような現象が起きます。五人の従業員がいればなんとか20分以内に食事を提供できるが、四人になってしまうと一気に処理能力が低下して、60分になってしまうというような現象です。渋滞の発生も同じです。ある一定の交通量、速度などの一点を超えると急激に渋滞が発生します。

どうやって生活習慣病を防ぐのか?

老朽化したパーツの入れ替えが適切に進行するように配慮するのが生活習慣病予防では重要です。具体的には食事のリズム・内容、運動など生活習慣改善を積極的に行ってオートファジーを活性化させ老朽化したパーツを排除することです。

なぜ、若い人は適当な生活でも健康を維持できるのか?

しかし、不思議なのは若い人はどんなに不健康な生活をしていてもそう簡単にシステムが破綻しないことです。中年以降はいとも簡単に生活習慣病になってしまい、不公平です!これは生物が「がん」を防ぐために創造した仕組みが関係しているものと思います。人体は発生した直後からシステムのパーツが漸減するようにプログラムされているのだと思います。例えば、出生時はシステムの構成パーツが10あったものが年齢と共に徐々に少なくなっていくイメージです。0歳の時に10、20歳の時に9、30歳で8、40歳で7、50歳で6というような具合です。このようにシステムが分解優勢なのは、暴走によるガン化(指数関数的な細胞増殖)のリスクをコントールするためだと想像されます。それでは、若者と中高年のシステムの頑健性を比較します。例えば、10あるパーツのうちで5まで正常に機能すれば問題ないと仮定します。20代の若者は9あるパーツのうちの5なのでシステムの稼働率56%まで低下しても対処できます。一方、50代では6あるシステムのうち5なのでシステムの稼働率83%まで低下すると破綻します。つまり、中高年の方が若者より常に高稼働率を維持する必要があり、余裕がないため、簡単にシステムが破綻して病気になると言えます。

どうすればいいか?

高齢になる程、健康(恒常性維持システム)を維持するのは困難になります。しかも、システムのメンテナンスは医療の仕事ではなく本人が主役です。なぜなら、服薬コンプライアンスの維持、健康的な食生活、適度な運動などが主要な解決手段だからです。高い意識を持って、日々健康的な生活を送る必要があります。これはとても一人では困難です。医師・薬剤師などのパートナーを見つけて一緒に頑張りましょう!

参考文献

・LIFESPAN(ライフスパン): 老いなき世界 デビッド・A・シンクレア (著), マシュー・D・ラプラント (著)
・新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書) 福岡 伸一
・渋滞学 (新潮選書) 西成 活裕 (著)