こんにちは薬剤師の赤羽です。
前回の考察で、食事制限と運動が痩せることにあまり効果的ではないことがわかりました。この結果は今までのダイエットの常識と大きく異なりますね。今回は食事制限に注目してその理由を掘り下げます。
食事制限が失敗する2つの大きな理由
食事制限によるダイエットが失敗してリバウンドする理由は2つあると考えられています。
理由? | 基礎代謝が下がるから |
理由? | 食欲が増進して空腹に耐えられなくなるから |
この2つが同時に起きることは大きな脅威です。なぜならリバウンドするときに基礎代謝が下がっているので、元の体重を上回る可能性が高いからです。
基礎代謝が下がる理由
今までのダイエットの常識として基礎代謝は不変と考えられていました。しかし、基礎代謝は食事量に応じて変動するようです。それを確認した実験結果は以下の通りです(1)。この実験はカロリー制限(6カ月)で減量が可能か検証したものです。
摂取カロリー | 安静代謝量 | 減量達成率 | |
通常状態 | 3200 | 100% | |
カロリー制限 | 1570 | 60% | 50% |
カロリー制限をすることで体重は予想の50%減までしか達成できませんでした。これは主に基礎代謝が40%低下したことが原因と思われます。ダイエットで途中から体重が減らなくなる現象はこれで説明できます。さらに恐ろしいことに低下した基礎代謝は急激なダイエットを8週間(体重10%程度減)した場合、1年後までもどらないという実験結果もあります(3)。
食欲が増進する理由
ダイエットで食事制限すると強烈な空腹感に襲われます。これもダイエットが失敗する要因です。空腹感は2種類のホルモンの働きで説明できます。10週間のダイエット(500キロカロリー減量)の後、1年間にわたりホルモン分泌量を追跡した結果です(2)。
作用 | ダイエットの影響 | |
グレリン | 空腹を感じさせる | 1年たっても分泌量が多い |
レプチン | 満腹を感じさせる | 1年たっても分泌量が少ない |
この変化により、空腹感を感じやすくなり、満腹感を感じづらくなってしまったのです。この結果、実験では1年後に10週間のダイエットの成果を維持することはできませんでした。
まとめ
食事制限は「基礎代謝の低下」、「食欲に関するホルモン調整」によって成功は困難ということがわかりました。では、我々はいったいどうすればいいのでしょうか?引き続き調査を続行したいと思います。
参考文献
1)They?starved?so that?others?be?better?fed: remembering Ancel Keys and the Minnesota experiment.?J Nutr.?2005 Jun;135(6):1347-52.
2)Long-Term Persistence of Hormonal Adaptations to Weight Loss N Engl J Med 2011; 365:1597-1604
3)Long-term?persistence?of?adaptive?thermogenesis?in subjects who have maintained a reduced body weight. Am J Clin Nutr.?2008 Oct;88(4):906-12.