コレステロールは下げすぎても大丈夫か?

こんにちは薬剤師の赤羽です。今回はコレステロールについて調査を進めました。
コレステロールの治療を開始して、急激にコレステロール値が低下し、逆に心配になる方がいらっしゃいます。これは週刊誌などでコレステロールを下げすぎると危険という記事を見たことが原因です。

コレステロールは下げすぎると危険なのか?

さて、週刊誌が主張するコレステロールを下げると危険な理由は以下の通りです(*1)。

1 コレステロールが高い方が長生きできる。下げると死亡率が上がる。
2 筋肉がおとろえる副作用がある。
3 コレステロールの基準値は製薬企業が儲けるために低めに設定されている。

雑誌の主張を見ると医師などの専門家が意見を述べているため、信憑性があるように感じます。特に数字を使って主張されると、より一層もっともらしく感じます。今回は雑誌の主張の中でも特に気になる項目1、2について掘り下げます。確かにコレステロールは体にとって必要なものなので、少なすぎることは問題があるように思います。この不安を解消するために大規模な実験が行われました。
※コレステロール関連の私の記事もご参照ください。

コレステロールを強力に下げる実験の結果

実験は約4000人の急性冠症候群(心筋梗塞や狭心症)の患者を対象に行われました。当該患者に対して強力にコレステロールを下げるグループと標準的に下げるグループに分けてその治療効果、副作用リスクが比較されました(*2)。

強力治療 標準治療 リスク減少率
コレステロールの薬 アトルバスタチン 80mg/day プラバスタチン40mg/day
 LDL低下率(30日後)  51% 22%
 LDL-コレステロール 62 mg/dL 95 mg/dL
再発率 22.4 % 26.3 % 16%
筋肉異常発症率 3.3% 2.7% 有意差なし
肝機能異常 1.9% 1.4% 有意差なし
治療中止率 22.8% 21.4% 有意差なし

強力治療で大幅にLDLコレステロールが低下していることがわかります。しかし、副作用発症率、治療中止率は標準療法と差がないことがわかりました。一方、冠症候群の発症率は強化治療の方が有意に減少しています。

まとめ

★今回の調査で、コレステロールを下げすぎても特に問題がないことがわかりました。また、LDL 60mg/dLまでは下げれば下げるほど、冠症候群(心臓の血管の病気)の発症リスクが下がることがわかりました。これは命に係わる重要な情報です。雑誌の記事を信じてコレステロールを下げないということは心筋梗塞・狭心症の危険が増大することを意味しています。少なくとも再発予防などのハイリスクな方々はコレステロールを下げるべきです。
★雑誌の記事を鵜呑みにするのは危険です。時には命の危険にさらされます。ほとんどの記事は専門家個人の意見で、大規模臨床試験の裏付けがありません。いまの医療は「より証拠」です。どんな偉い先生でも、論だけでは信用できません。もっともらしい「論」を展開して自分にとって都合のいい結末に結び付けているだけです。皆さんの身近にいるお医者さんや薬剤師は医療にまつわる「証拠」を集めるプロフェッショナルです。テレビや雑誌を見て心配になったらかかりつけの医師、薬剤師に相談しましょう!

参考文献

1)「週刊現代」2017年5月27日号 参考URL
2)Cannon CP et al for the pravastatin or atorvastatin evaluation and infection therapy-thrombolysis in myocardial infarction 22 investigators: Comparison of intensive and moderate after acute coronary syndromes. N Engl J Med. 2004; 350: 1495-504.